創書日和「炎」 かげろう/逢坂桜
子供の頃から病弱だった。
色白で、ほっそりとした腕に、青白い血管が透けていて。
いつも、ほんのりと見つめて、微笑んでいた。
「あいつがよろこぶなら、ずいぶん無茶もしたよ。なぁ?」
わたしはうなずく。
あなたがよろこぶことは、あの子がよろこぶことだから。
「あいつのこと、あのころのこと。全部、なつかしいんだ」
夫のコーヒーに手を伸ばす。
冷えていた。
「あの人のこと・・・お願いね。あなたしかいないの」
桜が散る頃だった。
病室に夕焼けの長い陽が差し込んでいた。
すでに、上半身を起こすこともできなかった。
「という
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