創書日和「歌」 お憂偽うた/大村 浩一
 
きたいのはいつだって
ここにはないうた


−2−


君の知らないところで
ひとりで君を護っていたひとが
またひとり消えた
彼が残そうとした記憶は
無価値のレッテルを貼られたので
誰にも引き継がれず
君はありふれたひとの愚かさで
誰かをひしぐ立法さえも世の流れと諦める
そのひしがれるひとに自分が含まれていることを
銃を手にしてもまだ気付かない
溜息の方角から目をそむけ
日々のちいさな慰めを追いかけるうち
島は海へ沈む
誰も妨げないように
ひっそり生きてきたひとたちを呑み込んで


−3−


腕を食われたひとと
妻を食われたひとと
光を食
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