創書日和「砂」/虹村 凌
思い出迷子な僕たちは
南へ南へ
潮騒の子守歌を聞きに
この道に沿って南へ
電車を乗り継いで
南へ
知らない所へ
波音が恋しくなって辿り着く
知らない浜辺に
打ち上げ花火の煙が
月を隠して
僕らを照らさないでいてくれる
思い出迷子
砂浜迷子
祭りの後の
たぶん最後の夜に
思い出迷子
砂浜迷子
線香花火は
潮風に揺られてポトリ
あの街が知ってる幾つかの物語
この海が知ってる幾つかの物語
転がる空っぽサンオイル
茶色い吸殻
波打ち際で揺れる
きっと最後の夜になる
明日になれば
思い出迷子
砂浜迷子
帰りたい夜があって
帰れない夜になって
迷子
何度も何度も
最後の夜を繰り返して
思い出迷子
夜の迷子
張り詰めた空気を溶かすように
雲の間から月がのぞく
思い出迷子
最後だと抱き寄せる
思い出迷子
どしゃりと音を立てて崩れて
ひとり残った砂浜迷子
もう何処にも帰れない
どしゃりと音を立てて
砂の中
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