創書日和「酒」/虹村 凌
冷たい金属のドアノブを回し
軽い色をした重たい木製のドアを開ける
笑顔で迎え入れてくれた先輩方は
僕の方に腕を回す
僕は震える手で小さなショットグラスを掴み
ひと思いに流し込む
出したての精子のような
溶けた鉄のような
言い知れぬ熱さをもったそいつは
喉を切り裂きながら胃袋に滑り落ちてゆく
「ごちそうさまがきこえない」
天使のような悪魔の笑顔
満たされるショットグラス
指先に力が入る
「いただきますがきこえない」
天使のような悪魔の声
満たされるショットグラス
手のひらにまで力が入る
「一滴残ってる」
天使のような悪魔の笑顔
満たされるショッ
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