創書日和「指」 『いつまでも、鰐』 /士狼(銀)
小指、食べられちゃったみたい
鰐の大きな牙に
君が憧れているのを知っている
嫌なものはなんでも噛み砕きたいらしい
脆くなったこの牙はもう
優しい君の指に
甘えることすらできないけれど
もう、指きり(やくそく)できないね
絵本に挟まった指に温かい血が通っても
まだ
君は痛々しく、笑う
涙の跡を、ひた隠しにして。
そんな哀しみは、見たくないのに
濡れた頬を舐めるより
小鳥のようなキスを送ろう
君に永遠を嫌わせたのは、
間違いなく、僕だ。
前 次 グループ"創書日和、過去。"
編 削 Point(7)