扉/山中 烏流
 
まるひとは
見たことがあるようなそぶりで
私の方を見る
 
瞬きをしたあとで
もう一度、そこを見れば
どちらのひとも
ただの影にすぎなかった
 
 
私の指が、吸い付くように
取っ手へと向かっていって
開いた隙間から覗くと
私のふりをしたひとが
天井を見ている
 
一度閉じてから
もう一度開いてみれば
私がそこにいて
扉を開いたひとは
私の形をした、ただの色だった
 
窓の外には
死にたがりの影があって
じっと私を刺している
ふりを、している
 
 
ガラス越しのひとを
確かめようとして、開けば
そこはただの色で
私は影のようになった
 
玄関の方に音がして
外側を見れば
私の顔をした私が
何故か、不思議そうにして
私を見ていた
 
 
開いた扉から見えた空は
泣き出しそうなくらいの
赤色を羽織っていて
 
私はそこに何かを見た
ような気がして
 
 
影の意味を、知った
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

   グループ"創書日和、過去。"
   Point(4)