記憶の断片小説続編・ロードムービー「卒業」/虹村 凌
 
謎の俺的道徳観だ。
「ヤられてぇ」
と思ってる時点で不徳だと思うのだが、まだ行動には移さない。
何をしたか忘れた。髪を撫でのか、抱きしめたのか。
…髪を撫でたのだろう。彼女が崩れるようにしゃがんだと言う、微かな記憶がある。
イっちまったらしい。実際は知らない。演技だったかも知れない。

気色悪い顔をした俺は、気色悪いであろう笑みを浮かべて新宿を去った。
心の中には、嘉人に対する勝利の拳を掲げていたと思う。



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