天国への調べ/ajisai
って眠るのもいいだろう
さあもう眠ろうか
暗闇がどんどん近づいてきた
男は歌い終わると目の前に黒猫が座り込んで
歌を聴いていたのに気付いた
猫に優しげな笑みを向けて小さな声で呟いた
「最期の歌を聴いてくれてありがとう」
言い終えるのと同時にひどく咳き込む
口に当てた布切れから血が滲むのが見える
男には死の影がすぐそこに迫っていた
捨て子だった男は孤児院で育った
竪琴も歌も小さい頃からぬきんでて上手く
幼い頃に孤児院を出て、吟遊詩人となった
いろんなところで音楽や歌を披露し
町から町へと旅をしていた
旅の生活は辛いことも多かったが
知らない土地のいろんな物
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