【短歌祭】見知らぬ冬/石瀬琳々
 
霜葉ふむ皮のブーツの小気味よさこのままいつか見知らぬ冬に


窓ガラスくもる吐息にだまりこむ人のしぐさのその残酷さ


冬薔薇(そうび)あかい棘さす指先の血のにじむ孤悲(こい)するどく痛く


指と指触れあうあとの切なさは白緑色(びゃくろくいろ)に沈むみずうみ


雪片が水にふれては消えてゆく記憶の湖面忘れるための


せつな刹那やさしく閉じて音もなく真綿のように雪は降りつつ


薄氷割ってさよなら砕けちる朝のひかりの白いくちづけ


はだかの手枯れた木肌に押しあてて泣くだけのこと孤(ひと)りごころは


かじかんだ指先つよくドアをあけそれきり一人見知らぬ冬へ



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