【短歌祭】見知らぬ冬/石瀬琳々
霜葉ふむ皮のブーツの小気味よさこのままいつか見知らぬ冬に
窓ガラスくもる吐息にだまりこむ人のしぐさのその残酷さ
冬薔薇(そうび)あかい棘さす指先の血のにじむ孤悲(こい)するどく痛く
指と指触れあうあとの切なさは白緑色(びゃくろくいろ)に沈むみずうみ
雪片が水にふれては消えてゆく記憶の湖面忘れるための
せつな刹那やさしく閉じて音もなく真綿のように雪は降りつつ
薄氷割ってさよなら砕けちる朝のひかりの白いくちづけ
はだかの手枯れた木肌に押しあてて泣くだけのこと孤(ひと)りごころは
かじかんだ指先つよくドアをあけそれきり一人見知らぬ冬へ
前 次 グループ"薊道"
編 削 Point(19)