ひとつだけお願い/ふるる
 
月光を浴びて生まれた一人の少女
その唇から
言葉がツタのように伸びてからまり
あの家を覆ったの

家の中には
青白い顔をした少年が一人
小さな椅子に座っていて
コーヒーミルを回していたの

ミルでは小さな星たちがプチプチとくだかれて
その音はきれいな音楽となり
甘い温かい雨のように降り注ぎ
床や屋根を濡らしたの

雨を注がれた少女のツタは
青々と茂り大きな花を咲かせ
その香りで街中の人がうっとりとなり
子供を大切にしはじめたの

むずかる子にはおいしいおかし
泣いている子はぎゅうっとだっこ
笑わない子はくすぐって
寂しい子なら遊んであげる

大切に
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