目/ふるる
 
彼の目は
像をまあるく切り抜いて

切り抜いたまあるの淵は
切れそうなほど鋭くて

(声)い



夜中に眼球が旅をする話を知っているでしょうか。
主人が眠りにつくとすぐ、眼球はまぶたの布団か
ら這い出して旅に出るのです。右の眼球は右に。
左の眼球は左に。世界をくるりと一周し、朝方に
はお互い目礼し、すれ違い、またもとのまぶたに
おさまるのです。眼球同士は話をします。夜中じ
ゅう旅をして、見てきたものを。怪しくも絢爛な
あの風景。恐ろしくも姦しいあの色、色、色、色、色、色、色、色、色。




どこかの夢に切れたような風景があるとしたら

まあるの淵で切られたもの

切り口は(声)いのではないでしょうか

夜中見た
恐ろしくも姦しい色




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