カスミソウの記憶/プル式
夢の中で私はお花を買いました。
汚い服を着た少年は
嬉しそうに私を見つめます。
淡い小さなカスミソウに
水玉模様のフィルムをかけて
少年は私に手渡します。
それは一つ一つが小さく
一つ一つが少年の瞳の様に
濁りの無い無垢な花でした。
私は不意に
本当に不意に
昔好きだった人の事を思い出しました。
口に出せなかった想いは
心の中で何年も彷徨い
それでもまだ
それでもまだ。
大きく花開く事の無かった恋は
いくつもの小さな花となり
心の中で咲いていました。
少年が売っていたのは
忘れられた記憶でした。
次にもしも出会ったならば
私はどの花を買うのでしょうか。
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