震顫/佐々宝砂
私に思い浮かべることのできる夢はいちばんきれいな場合で痙攣する手が握る綿毛のたんぽぽで。
いま私を抱いている震える手の持ち主にそれを伝える意志を私は持ち得ず私の視界は再びみたび白くなりはじめ私どうせ不妊症なんだからおねがいできないんだからおねがい全部ちょうだい私の中におねがいと私は自分が何を言っているのか判断できない状態で絶叫する。
白いこどもたち。
飛び立ってゆく綿毛、綿毛、
痙攣する手が手渡そうとする綿毛のたんぽぽ。
明るい朝の日差しのなかで。
蘭の会4月月例詩集「たんぽぽ」
http://www.os.rim.or.jp/〜orchid/
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