女王は生き血の風呂から手を伸ばし/佐々宝砂
女王は生き血の風呂から手を伸ばし
君の頬をなでまわした
君は少しうろたえて後ずさり
そこここに跳ね散った血液の飛沫に
足を滑らせた
べっとりと頬を濡らす血を
拳で拭いながら
君は家出した猫を思う
乾涸らびてゆく河床を思う
生き血の匂いは
もう
君の感覚にも甘いものとなっている
**
少女がひとり連れてこられる
少女の服装は質素で
化粧気のない唇は恐怖に歪んでいる
君は君の斧で少女の首をあっさり切り落とす
逆さ吊りにされた首の切り口から血があふれ
女王の風呂に流れ込んでゆく
女王は嬰児の笑いを笑い
君を生き血の風呂にひきずりこも
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