女王の片恋に関する11のソネット/佐々宝砂
にそれを聞く。
マッドサイエンティストは明晰だ。
おそらくきみなんかより、ずっと。
その4
白衣のポケットにひそむメスの輝き。
注射器のなかには
うすあおい液体がゆらいでいる。
腕を出しなさい、と女王はいう。
パイナップル、チョコレート、
リンゴの木、青ざめた蛇、
音楽にのってはじける風船、
陽気にうたう小猿の群。
きみはもう思い悩んだりなんかしない、
きみがそれを望もうと望むまいと、
きみの心は幸福に満たされ、
微笑を禁じられた女王は
呵々大笑する。
あかるく開放的な密室で。
その5
大目玉の昆虫目玉の怪物の、
棘と毛だ
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