春の抽象/塔野夏子
春という季節は
いつでも液状にデフォルメされてゆく
匂い立つ色彩が
にじみ流れ溶けあい渦巻く
私の輪郭もそのただなかに
半ばは溶けかかりながら
けれど決して溶けきることはなく
冬をいとおしみ夏を待ち焦がれながら
ひとつの違和感として存在する
そう春と私とは
もどかしくもどうしようもなく互いに違和感であり
だから私の輪郭は
半端に溶けきれないまま
けれどなぜか春そのものよりもひどくデフォルメされながら
かしいだ軌跡で通り過ぎてゆく
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