別離の詩/塔野夏子
春が白く垂れこめている
足元には名前を知らない薄紫の小さな花が
風に揺れている
一緒に
何処かへ行けると思っていた
何処へか はわからないまま
僕らは二人して歩いてきた
だけどもう 此処からは何処へも行けない
一緒には
《君は僕の夢だった
《いやそれは今でも変わらない 君は僕の夢だ
《ただその夢を見つづけることが 僕にはもうできないのだ
白く垂れこめた春は
追憶を映し出すスクリーンのようだ
あの時も あの時も あの時も
何処かへ行けると思っていた
何処へか はわからないまま――
もしそれをもっと つきつめていたなら
何かが 変わっていただろ
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