春の屋上/
塔野夏子
柵に沿って並べられたプランターには
とりどりのチューリップ
此処は白い建物の屋上
見あげる空も白い
其処には半透明の歯車がいくつか
組み合わさってゆっくりと回っている
それらは多分
さっきから意識を蝕みやまないナルシスティックな憂鬱を
増幅させる装置なのだ
地上のざわめきが
だんだん遠ざかる気がする
胸から心臓が抜けだして
脈打つ赤い風船になって白い空へと
昇っていってしまいそうな気がする……
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