春の午後/塔野夏子
 
ひしゃげた白い空に
ひしゃげた日暈が架かっている

とりどりのチューリップは群れ咲き
金属的に笑っている

その笑い声の中を
黙示録に腐蝕された心臓がひとつ
歩いてゆく

果たされるあてを失くした約束と
解かれる術を持たない暗号とを
引き摺りながら

空間に微かな懶(ものう)い罅を入れながら
何処へか――
長い春の午後を歩いてゆく




   グループ"春のオブジェ"
   Point(7)