春の午後/
塔野夏子
ひしゃげた白い空に
ひしゃげた日暈が架かっている
とりどりのチューリップは群れ咲き
金属的に笑っている
その笑い声の中を
黙示録に腐蝕された心臓がひとつ
歩いてゆく
果たされるあてを失くした約束と
解かれる術を持たない暗号とを
引き摺りながら
空間に微かな懶(ものう)い罅を入れながら
何処へか――
長い春の午後を歩いてゆく
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