近代詩再読 立原道造/岡部淳太郎
つた
いかな日にみねに灰の煙の立ち初(そ)めたか
火の山の物語と……また幾夜さかは 果して夢に
その夜習ったエリーザベトの物語を織つた
(「はじめてのものに」全行)
詩集『萱草に寄す』の冒頭に置かれた詩である。「エリーザベト」などと、西洋の女性名を持ち出してきて、このあたりに立原道造のナイーブさのようなものが表われているような気がする。
雨あがりのしづかな風がそよいでゐた あのとき
叢(くさむら)は露の雫にまだ濡れて 蜘蛛の念珠(おじゆず)も光つてゐた
東の空には ゆるやかな虹がかかつてゐた
僕らはだまつて立
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