猫たちの肖像画/まどろむ海月
 
幸福なんかではありませんでした。いくら求め合っても、
与えあっているつもりでも、愛も幸福も、実感として深く感じられる
ものがまるでないのでした。そして文字通り愛の結晶とも言える子供
は、不思議にも皮肉なことに二人の間にはどうしても生まれないので
した。誰が見ても仲むつまじく幸福な夫婦でした。たがいに相手をや
さしく気づかうことにおいても、人並み優れた二人でした。こうした
二人に、例の猫がうやうやしく献上されたとき、二人は思わず喜びの
声をあげました。それほど美しい魅惑的な猫だったのです。これこそ
彼らが求めてやまなかったもの、そのもののような気さえしました。
こうし
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