『Kiss・Kid・Kanon』/川村 透
 

君は泣きじゃくり、いつしかその目はうつろに
瞬膜がおりてきたみたいに、鈍色に、にごる
体からは力が抜け、蟻地獄に足をとられた昆虫みたいに、沈んで行く心
首をささえる事も、出来なくなり、がくり、とこうべを僕に預ける君よ
カノン
瞬きもゆっくりと、しだいしだいに閉じてゆく瞳
ふいごのように赤く早く熱かった息も静かな蒼の気配に濡れてゆく
がっ、と最後に大きく息を吐いた君はこうして
カノン
安らかな死を、死に始める。僕は、
汗をかきながら、君の死体を抱いてゆれている、道化じみたパジャマ姿で
むしむしとした夜のまんなかで、いつしか繰り返し
繰り返し繰り返し、もうひとつの祈りを、祈
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