バラの名前/大覚アキラ
発端は、森の奥で彼女が猫を拾ってきたことから始まったのだ。
「このこ、飼ってもいい?」
そのとき彼女が咥えていたのはセブンスターだったのかチュッパチャップスだったのかあるいは鹿児島は日奈久の名産である竹輪であったのかはたまた友人の誰かがアムステルダムからこっそり仕込んで来た最上級のジョイントだったのかそんなことはどうでもいいような気がするのだがもしかするとそれこそが問題の本質であり今おれを悩ませているこの状況を打開する鍵なのかもしれないと誰かがおれの頭の片隅で囁く声が聴こえるような気がするがそれはきっと気のせいだろうと自分に言い聞かせてみるということをこの2週間おれは延々続けているのだ
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