死神と私 −雪溶け−/蒸発王
 
方を教えた春
初めての家出をして結婚式に無理矢理僕をひっぱった初夏
新しい家族のために僕が家を出た真夏
さかしまの秋雨を標になぐさめた秋

いつも娘の言葉が
泣き顔が
笑い声が
彼女の全てのぬくもりがあって
僕は季節を感じていたのです

全てのぬくもりが


季節に



ふつり   と
瞳の奥が裂けたような気がしました
目蓋の裂け目から頬が焼け焦げるような
高温の
涙が
落ちて
墓標の雪を溶かします
平生に流す冷たい塩水ではなく
熱い火傷をするような涙が
雪を溶かして娘の名前をあらわにしていきます
暖められた僕の目が煌煌と燃えているように感
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