友達の物語/アンテ
 
かうと
順番待ちの麻袋に友達の頭部が詰め込まれていた
頭部はみなぼんやりしていて
彼女のことが判らないようだった
身体はかさばるので街に返したのだと説明して
廃材屋は未開封だった包みを開けたが
中はもぬけの殻だった
廃材屋はしばらく辺りを探していたが
ぱちんと手を打って
彼女の頭部を身体から取り外して麻袋に詰め
紐でしっかりと口を縛って差し出した
彼女の身体は麻袋を背負って廃材屋をあとにし
頭部がないせいで何度も道に迷ったが
なんとか無事家にたどり着いた
呼び鈴を押すと
中から彼女そっくりな女性が顔を出した
彼女の身体は麻袋を彼女に渡して
手振りでさようならを告げて
家をあとにして街へ出た
疲れた身体をほぐしながら通りの様子をうかがうと
人混みの所々に頭のない人がまぎれていて
不器用にそれでも懸命に生きているようだった
彼女の身体は大きく背伸びをしてから
一歩を踏み出した
すべきことはたくさんあった




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