血の物語/アンテ
 
いっそ血など捨て去ってしまおうかと
黒く濁った流れをぼんやりと眺めた
流れ込む支流もそれ以上に濁っているので
川はますます黒く澱み
鼻をつく匂いが全体を包んでいた
突然
涙があふれて止まらなくなり
彼女は声をかみ殺して泣いた
水滴が川面に落ちるたび
波紋が一瞬広がって
それもすぐに流れに呑まれてしまった
もとの血はまだ使えるだろうか
彼女は歩き出したが
ふと立ち止まり
両手を空にかざしてみた
それは奇妙な色をしていて
ゆっくりと動かすと
奇妙な様子で形を変えた




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