街の物語/アンテ
あることに気づいた
試しに家の鍵を差し込んで回すと
勢いよくビルの屋上が開いた
中には更にひとまわり小さな街があって
ミニチュアではない証拠に
粉粒ほどの人たちが暮らしていた
街の中心には同じようにビルが建っていて
同じように開いた屋上のなかを
不自然なサイズの少女が覗き込んでいた
彼女は手を伸ばして
少女を指でつまんで持ち上げて顔を確かめた
少女は彼女にとてもよく似ていたが
なにかが決定的に違っていた
その時突然彼女は強い力に掴まれて
身体が宙に浮いた
驚いた拍子に手を放し
少女を彼女の住む街に落としてしまった
彼女の身体は上昇しつづけ
街はどんどん遠ざかっていった
彼女は必死に叫んだが
なにも彼女を引き止めようとはしなかった
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