嘘の物語/アンテ
を幾つも口にしなければならず
効力が切れるまで何日も嘘をつきつづけた挙げ句に
自分の居場所を失うはめになった
いっそ 嘘をつきとおせばいいのだと
ある時彼女は決心して
瓶のかけらをすべて頬ばって呑み込んだ
すると突然頭のなかがめちゃくちゃに掻き回されて
うずくまって何度も吐くたび
彼女だったものが欠け落ちていった
ようやく痛みがおさまった頃には
本当のことがなにも思い出せなくなっていた
とにかく気持ちが落ち着いたので
空っぽになったガラス瓶を抱えて外へ出た
落ち着いて街をよく見ると
たくさんの嘘が人のふりをして
あちこちに紛れ込んでいて
そのせいで人々は混乱し互いに
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