残 夏/塔野夏子
 
ゆるい風が吹き込む午さがりの窓辺に
詩がものうげにもたれかかって
遠い目をしている
 (私のところにあらわれる詩はいつも
  遠い目をしているが
  この時期はとりわけ遠い目をしている)

その遠い目に映るものは何だろうと
窓の遠くを見やると
丘のうえに少年たちが並んでいる

――あの少年たちはきっとさっきまで
  輝く夏雲を見あげ見とれていたんだ

詩の遠い瞳が虚ろさを増す

少年はひとりひとり立ち去ってゆく

少年は
   ひとり
      ひとり
         立ち去ってゆく

とり残された丘からこの窓へ
ゆるい風が吹いて
詩はやがてゆっくりと
目を伏せる



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