ある帰郷(マリーノ超特急)/角田寿星
パンとミルクを分けてもらい
大工のふりをした金庫破りに届けた
弁護士のふりをした天才的詐欺師と立ち話
学校の裏庭には密造酒の工房があり
教会の懺悔室で
村びとは“仕事”の依頼を受け取った
あたしたちは 互いに泥棒し合いながら
しあわせな荒波越えの旅をつづけた
あたしたちは 与えられたおもちゃを
壊していくだけの ただの子供だった
サリのまぼろしは無言のまま
炙ったマシマロのまぼろしを差し出す
口腔にひろがる甘い記憶のまぼろしが
次から次へと
あたしを突き刺していく
海を渡る死神の列車
突然 村を襲撃する管理局の兵隊
父さんと母さんは運命のように崩れおち
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