ノート(はざま 歯車)/木立 悟
けだものに引きずられ
遠くも近くもないところへゆく
何かを諦めたような
朝と目が合う
布に覆われた空がぼそぼそとたなびき
まなじりは冷たく足は軽い
虫はおらず 雨が近い
灯は点滅し 雨が近い
何も映さず
地を駆ける鏡の群れ
巨大なひとつのまばたきとなり
空に風を放っている
境界の無いたましいを
けだものは境界に置いてゆく
裏返る鉛の目で
見つめつづける
雨後に降る灯
夜に満ちて
路を穿ち
光の頭を刺してゆく
無数のけだもののうちのひとりが
断崖の上で
はらわたの機械をこぼしてゆく
陽を 波を 曇を
虹色の血が越えてゆく
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