砂/アンテ
 

砂時計のひとつは
くびれた部分の形がうまくなくて
砂がすぐにつまった
ぼくとおんなじだって言ったら
彼女が怒って
たたき割ってしまって
うす黄色の砂が床じゅうに散らばった
今でもごくまれに
部屋のかたすみから砂粒が出てきて
そのたび
ちぇっと唇をとがらせる彼女が

そんな風に
彼女がいてくれることが
当たり前のように
毎日の一部になっていることに
お礼じゃなく
謝るのでもなく
ちゃんと気持ちを伝えなくちゃいけないって
わかっているけれど
でも言い出せなくて

さらさら さら

坂道をのぼりきる
円柱に近づいてみてようやく
正体が巨大な砂時計だと
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