ベッドの上で空回りし続ける欲望の足音/虹村 凌
僕が部屋のベッドの上で女の子とキスしていた頃
外では無邪気な子供達が走り回っていた
僕が彼女の部屋のベッドの上でフェラチオをしてもらっていた頃
外では蝉達が有らん限りの声を上げて叫んでいた
僕が彼女の部屋のベッドでセックスをしていた頃
彼女の彼氏は予備校で必死に勉強をしていた
僕が自分の部屋で起き上がった時に聞こえた
渦を巻いて回り続ける欲望の足音が
だんだんと近づいてくる音
どくん どくん どくん どくん
でも 天国へのパスポートを買い忘れてしまったから
濡れて光るあの入り口へは入る事が出来なかった
どくん どくん どくん どくん
どくん どくん どくん どくん
どくん
足音が遠ざかるにつれて 目は冴えわたる
立ちこめる煙草の煙の中に見えた誰かの足は
ゆっくりと部屋を出て行くようだ
前 次 グループ"チャコール・フィルター"
編 削 Point(4)