少しだけ詩を書いた夜/虹村 凌
 
いコーヒーが好きだった

酔いどれ天使が歌う
ブルージーな「愛を取り戻せ」に
チンピラになりたかった僕は涙を流した
学生はずっと頭を抱えている
僕と同じ中間考査で悩んでいるのだろうか
隣に座ればわかりあえたかもしれない
でも僕は動けなかった
彼がいなくなればいいと思った

目の前を
千鳥足ですらない裸足の女神が引きずられて歩いてゆく
僕はチンピラになれない事を知っていて
少しだけ神様にお願いをする

どうか僕を不幸にしてください

チンピラになりたくなくなった僕は
家に帰って
少しだけ詩を書いて眠った
チンピラになんてなりたくない
不幸になんてなりたくない



家のベッドはやわらかくて暖かかった
120円の缶コーヒーを幸せにしていた夜は
もうすぐ開けてしまう

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