貝塚 より/沼谷香澄
 
みおろせば、
在るままに形は残り、言葉は 風化してゆく、
私には確信がある、必ずや男のほうが、女への殉死であろう、
合葬というのだろうか、みまかりし人を目守(まも)りて、
どこまでもゆく決意もて、墓穴に身を入れたのだ、
抱き返さない腕を抱いて、
見上げない頭をなでて、
大切な顔を庇って、いるのであろう。
ヨブ記による反歌

我(われ)何(なに)の氣力(ちから)ありてか尚(なほ)俟(ま)たん黒く残れる皐月の雪を

裨(たすけ)なき談(はなし)益(えき)なき詞(ことば)もて辯論(あげつら)はんは喜(たのし)もよ、夢

初出:Tongue12号(終刊) 2005年2月11日  原文縦書 

  グループ"個人誌「Tongue」収録作"
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