風の化石 2P/10P/翼がはえた猫
だ
憐れな物達を掬っていく
持ちきれなくなったとき
これを使いなさいと
大きなビニールが目の前に流れてきた
袋がいっぱいになって、僕はひと休みする
すると、海からなにか聞こえた気がした
お帰りなさい、お帰りなさいって
「ただいま」
それだけ言って、僕は帰ることにした
車まで戻って、海を振り向いたら
銀色の腕を振っていた気がする
会社に帰ると、こっぴどく怒られた
けれども、気持ちは爽快だった
【流木の哀しみ】
散っていった者の心を
誰も知らない
揺らぐ海原に抱かれた
森からはぐれた
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