あんみつ/……とある蛙
 
何年ぶりだろう
二人で食べる黒蜜のあんみつ

手術前のある日の病室

老舗の和菓子屋の前を通り
ふと気づいて買った
お土産のあんみつ

あんみつの中には
紅白の求肥や赤豌豆
漉し餡を一練り
お約束の缶詰の蜜柑

賽の目の寒天には
黒蜜か白蜜か
君は黒蜜を選び
嬉しそうにかけ回す

二人は黙々と食べる
黙々と食べる。
時折
「美味しい」と
嬉しそうに言う君を眺めながら
僕も一緒に食べながら
とても美味しいと言う

とても幸せな時間を
スプーンで掬って食べる。

そして
時間が淡々と過ぎてゆく
小さな幸せな時間の残りが

※船橋屋です。
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