『ラッキーストライク』 卵から始まるはな詩?/ただのみきや
くテレビに出ていたあいつも
やりましたよわたしが
あれは最高でしたね
腰を抜かしたって言うじゃないですか
あの怯えた顔
見咎められた小悪党感丸出しで
実家は養鶏業でした
わたしは卵の扱いが長けていまして
三歳で五個
五歳で十個の卵を自在にお手玉したものです
養鶏業者の運動会では卵キャッチボールの種目で
兄とペアーで百五十八メートルを記録して優勝しました
いま思えば良い時代でしたよ
でも長い不景気と親父の賭け事のせいで
養鶏場が他人の手に渡ってしまい
その頃からわたしの人生は狂ってしまった
――自首した理由ですか?
簡単に言うと生きる希望を失ったからです
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