追憶のマーメイド/ゴースト(無月野青馬)
 
その日
マーマンはただ眺め続けることしか出来なかった
マーメイドが泡になりながら天へ昇っていく光景をただ眺めていることしか出来なかったのだ
その日も
マーマンは
マーメイドは
空が広がっているのに寂しいと思っていた
何処まで行っても砂漠だと思っていた
それは
マーメイドはマーマンに
マーマンはマーメイドに
限界を感じていたからだろう
いくら水を呑んでも渇きが癒えない喉のように
渇いていたからだろう
それは膜があるからだ
それは膜の所為だ
2人は気付いていた
ならば
マーメイドとマーマンで
マーマンがマーメイドの
マーメイドがマーマンの
膜を破ればいい

[次のページ] グループ"水棲詩集"
   Point(1)