詩集『十夜録』全篇/春日線香
 
とめて弔いを出すことが決まり
縁者に報せを届けることになった
茶碗を死者の数と同じだけの欠片に砕き
それを使いに持たせる
報せが届いて縁者が集えば
欠片も揃うことになり
全き茶碗がひとつできあがる
そうやって弔いの場を設けるのだ
だがいざ葬式の段になると
欠片がひとつ足りない
どうしてもひとつだけ足りない
どういうことかその場の誰に尋ねても
どの家が席を断ったのかわからず
使いを質しても判然としない
みな不思議な面持ちで
儀式を終えた



得意気に話すのが憎らしい
大体 あめふらしがどうしてここにいる
こんなものを住まわせた覚えはないし
ただ人を待っ
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