詩集『十夜録』全篇/春日線香
 

からすに咥えられたままで
夜になったらどうしよう
田んぼに落とされたらどうしよう





 りゅうぐうのつかい

りゅうぐうのつかいを飲んでしまった
寒天のようだったから つい
つるつると飲みこんでしまった
せっかく遠いところから来てくれたのに
まさか飲んでしまうとは と
母屋の人たちは驚いている
わたしも驚いている
とにかく体に水を足してやらなければいけない気がして
泉に行くと
ちょうど牛や馬を殺しているところで
あわてふためいて畑の裏にまわると
こちらは女学生が列を組んで
行く手を遮っている
ああもう終わりだ
じわりじわりと包囲を狭められて
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