済州島の霧雨に濡れて馬は/平瀬たかのり
 
 種付けのために
 つれてこられた済州島で
 その馬は
 霧雨に濡れてさみしげに
 たたずんでいたという

 皐月賞と日本ダービーを
 勝っていた
 でも隣の国に贈られた
 走る仔を遺せなかったから

 日本語は
 耳慣れていたか
 ハングルは
 どんなふうに聞こえたか

 海を渡り
 季節がひとめぐりもしないうちに
 死んでしまった二冠馬に
 思いをはせる
 それから一度
 祖国、と
 つぶやいてみる

   〈カツトップエース〉
   グループ"草駿譜"
   Point(4)