1/ayame
 
深く吐く、吸う。それを繰り返した。雨は強くなり、霧が濃くなった。自分以外が霧に包まれ帰る道もわからない。どうすればいいのかも、わからない。
息を深くはいて目をあける。良々はキッチンに立つと水道をひねる。透明のコップに注ぐと、それをあおった。流れる水道を止めずにコップを乱暴におくと良々はずるずると座り込んだ。これは夢だ。気にする必要はない。これは、夢なのだ。だって、あの場所もフェンスも風景もみたことがない。白い髪の少女も良々は、知らない。それなのにまだ吐き気がするような感覚だ。気持ちを落ち着かせると、立ち上がる。リビングに入るとカーテンがなびいていて、雨風が入ってきている。窓が割れていた。これはどうしようもないので、応急処置としてビニールを貼る。割れた部分の硝子が見当たらないので、外に落ちたのだろう。修理は明日どうにかするかときびすをかえし、止めないでおいた水道を止めると、部屋に戻る。ドアの閉まる音は一瞬の光とともに消えた。 グループ"Monster"
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