木枯らしお父さん/平瀬たかのり
ル部員(補欠)だったワタシが洋子のカレシを大嫌いになるのも当たり前だ
んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんっ
お父さんの呻き声といっしょに塗りつぶされていくオムソバ
店員AとBが夏休みの予定を話し始めた
よりにもよってカノジョと海へ行く予定であった
それこそはお父さんに聞こえてはならなかった
平板発音の「カノジョ」は最も聞こえてならなかった
ダンッ
コテでオムソバを両断するお父さん
ダッダンッダッダンッ
ダンッダダンッダンッダダンッ
鉄板上の無残な分断
青海苔と粉ガツオをわしづかみにして一気にふりかけると
もうオムソバは神の食物でもなんでもなくなってしまった
妻折笠も道中合羽もひたすら暑くるしいばかりで
長楊枝をくわえてしゃべるのに慣れていないから
何をしゃべってるのか自分でもよく分からない
それでもお父さんは言ってみた
「あっしには関わりのねえこって」
ぽたっ
じゅっ
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