川柳が好きだから俳句を読んでいる(3、赤尾兜子のこと)/黒川排除 (oldsoup)
 
けど、小馬鹿にはする。なによりも自殺をしているというその理由があるために。

 唖(おし)ボタン殖える石の家ぬくい犬の受胎

 持っている全句集のパラフィン紙があまりにぼろぼろなので持ち出すのに手間取るから現代俳句データベースから引っ張ってきているが、ともあれこの暴力的な句であろう。別に戦争を体験したから作品に必ずしも深みが出るわけではなく、むしろその逆であることが多いのだけども、赤尾兜子の作品は戦争から帰ってきてしばらくの間、非常に冴え渡っている。まるで戦争から持ち帰ってきた誰かの遺品をそのままそこに晒し始めたかのようにキラキラしている、暴力紳士のスーパーノヴァだ。押ボタンと唖を音で絡め
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