青いカラス/kawa
鉄塔に、カラスが幾羽か停まっていた。カラスは青く、空を背景にして透明のようで、目を離すと見失ってしまいそうだった。
私は、はたと、何かを思い出さなければ、という気持ちになって、
「青いカラスだなんて不思議だ」
と呟いた。すると後ろから
『カラスは青いものだろう』
と声がした。老人だった。
そうだったろうか。カラスとは黒と決まっていたのではなかったろうか。
『しかし私は、黒いカラスをみたことがあると思うのです。それどころか、黒いカラスばかり見ていたように思うのです』
と応えた。
老人はさも重そうに頭を回してから、
『それはあなたは嘘をついている
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