卵みたいな卯月/小池房枝
始まりのながしそうめんひとすじの流れを開いた歌を覚えてる
水面へとそして空へと浮かび出たばかりのように濡れた満月
ぽっかりと伐りひらかれた森の中ヤブラン静かに工事を待ってる
なつかしい人なつかしい物語キツネの窓の向こうにも春
花びらは散り伏してからも風のたび立ち上がっては走リ廻るよ
ストロベリーチーズケーキとバーガンディチェリーのダブルの溶ける速さよ
ユリノキの梢にぽっぽと緑色ともし火のように点っています
昼間見た残され池の雑魚らにも雨ふるらしも良かったねみんな
透明な小鳥は空に木蓮の白き遺骸はやがて大地に
身の内に秘するものなど何も
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