三月の子守唄/岡部淳太郎
 
は滞りなく進み、花の季節は何度も一回転し
    ては元に戻り、あの時を思い出しはしても、
    もはや心痛むことはなく、泣くこともなく、
    ありし日のあなたの歩みを、ただ懐かしさと
    ともに、思い出すだけだ。それは失ったこと
    へのあきらめではなく、暗さのうらにある明
    るさの、粗い素描のようなものであって、こ
    れからそこに肉付けしてゆく、記憶。編みこ
    まれてゆく、思い出。あなたよ、だからこそ、


 眠れ
 眠れ
とおに
亡き者よ
 眠れ

遠くへ
遠くへ
いつか
誰もが
たどり
 つく
遠くへ

そこ
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