飛ぶ鳥,落ちる鳥(鋭角と季節のはじめ、台風の間)/はるな
は藍色に、裾野にはくすんで赤みを帯びた雲が絡まっています.わたしは呼び声を待ちました、ずっと待ちました、望みました、待ちました.声はわたしを呼びません.未だ、呼ばれていないだけです.
わたしはあるとき恐ろしい一つの考えを持つようになりました.それは、わたしがあなたを愛しているかもしれないということです.初めにその考えに行き当たったときは、ぞっとして、わたしはうろうろとドアーを開けたり閉めたり、放り投げたり、煮込んだりしました.いまその考えはわたしの中の箪笥にひっそりと納まっています.その箪笥はたぶん、とても危険なもののひとつです.わたしにとって.わたしはその箪笥を、大抵は自分の意思で開けたり
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