春紫苑/士狼(銀)
 
答えの見つからない黄昏は
何も語らず海に呑まれた
わたしはハルシオンを含んだまま
冷たい駐車場で瞼(メ)を閉じる
柔らかな夜風が
アルコホォルの香りを運び
弛緩したピアノ線が
わたしと思い出を縫い合わせる

夢に咲いたハルジオン
静かに涙を弾き、はらりと揺れた
影に縛られない蝶々が
舌で熔けゆく錠剤みたいに
温く苦く、痛みを添えて
思い出でゆっくりと錆びていく

昇華された蝶々を抱いて
わたしはひとり、朝を待つ
星空の下で月光に洗われた灰猫は
真っ白な体で夜に戻る
あの仔はきっとわたしの希望
闇に融ける声を聴きながら
逃げてきた悲しい過去を
答えを奪
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   グループ"complex≒indication"
   Point(10)